東京地方裁判所 昭和46年(借チ)2号 決定
〔主文〕申立人が、本裁判確定後三か月以内に、相手方に対し金三二四、〇〇〇円を支払うことを条件に、別紙目録(一)記載の賃貸借の内容につぎのとおり変更する。
目的 堅固建物所有の目的
期間 昭和七六年六月三〇日まで
賃料 右金員支払の翌月分から一か月金一、五五〇円
〔理由〕一 本件申立の要旨
(一) 申立人は、昭和二三年九月一日相手方から別紙目録(二)記載中の目的土地(以下「本件土地」という。)を賃借し、現賃貸借の内容は同目録記載のとおりである。
(二) 申立人は、本件土地のうえに、同目録(二)記載の建物を所有している。
(三) ところで、本件賃貸借契約締結当時、本件土地附近は木造平家建物が数軒存する程度であつたが、現在は、準防火地域、第三種工業地域に指定されたほか附近一帯商店工場等が軒を並べて林立し、鉄骨鉄筋建、三階建も建築され、事情の変更により、堅固な建物の所有を目的とするのが相当であるに至つた。
(四) そこで、申立人は、本件土地のうえに、軽鉄骨造り三階建(床面積各26.44平方米)に改築するため、本件賃貸借の目的を堅固な建物所有に改めたいが、相手方と紛争中のため、協議が調わないので、本件申立をする。
二 当裁判所の判断
(一) 本件で取調べた資料によれば前記一の(一)(二)の事実のほか、本件土地賃貸借契約締結当時、附近一体木造建物が通例であつたが、その後、準工業地域、準防火地域、に指定され、現在は、家屋が密集化し、堅固な建物は、現時点では、その数は少いが、今後、中、小商工業地としての発展により建替えに際しては、堅固化がすゝむものと予想することができ、右事実によれば、本件土地は、「附近の土地利用状況の変化」に準じた「その他の事情の変更」により、現に借地権を設定する際は堅固な建物所有を目的とするのが相当となつたということができる。
他に、目的を変更し、堅固な建物に改築するのを不当とすべき事由はない。
そこで、本件申立は後記の条件の下に認容すべきである。
(二) 附随の処分につき検討する。
鑑定委員会の意見は、申立人に対し、財産上の給付として金三二四、〇〇〇円を支払わせ、賃料を一平方米約三〇円、月額金一、五五〇円に増額することとし、給付金算定の根拠として、現時点における非堅固のまゝの更新料に借地権増加額を加算して求めている。
当裁判所は、本件賃貸借の目的変更に伴い、借地法二条、七条の趣旨により、本裁判後約三〇年間になるよう主文掲記のとおりと変更する。しかして、右のごとき期間の延長および現実に堅固な建物が可能となることにより、朽廃による借地権消滅の可能性がなくなり、建物買取価額の増加により土地の明渡を求めにくくなり、結局本件借地権が強化され、借地価格は増加する。そこで、申立人に右増加分を支払わせるべく、その額は、本件の近くの高圧線との関係上、建築階層が三階程度にとどまることを考慮し、鑑定委員会の定めるとおり金三二四、〇〇〇円(更地価格の約8.4%にあたる。)と定める(鑑定委員会は、期間延長の不利益を借地権価格と別に考慮するが、期間は借地権の構成する主な要素であり、したがつて借地権価格にも影響を与えるもので、一括して借地権価格として評価できる。) (覧康生)
目録(一)
(賃貸借の内容)
1 目的土地 東京都荒川区東尾久六丁目三二一四番地の一(登記簿上)
宅地 411.90平方米(124.60坪)
のうち
41.65平方米(12.60坪)
(契約上)
51.23平方米(15.50坪)
(実測)
2 当事者
賃貸人 相手方
賃借人 申立人
3 目的 非堅固建物所有
4 期間 昭和二三年九月一日から期間の定めなし
5 現地代 一か月金一、一三四円(供託中)
目録(二)
(現存建物)
東京都荒川区東尾久六丁目三二一四番地一家屋番号三二一四番一の二
木造亜鉛メッキ鋼板瓦交葺二階建
店舗、居宅
一階 50.28平方米(15.21坪)
二階 37.42平方米(11.32坪)